タイトルどおり江戸の街の”悪党”を描いた作品。
短編連作として花魁『三千歳』をキーに様々な悪党像を描く。
僕は知らなかったんですが、登場人物の三千歳と通称”直侍”こと片岡直次郎は歌舞伎で演じられる人物だそうです。
人を脅す事を生業とする者、辻斬り(今で言う通り魔)を行う者、詐欺師・・・等いくつもの”悪党”が登場しますが、彼らは皆人間味も思いやりも持ち合わせている。
また、悪事のいくつかは花魁『三千歳』の元へ遭いに行くための金策であるというところもどこか微笑ましい部分すらある気がします。
僕は基本的に『絶対的な善も悪も存在しない』という考えなのでこの”悪党”の描き方は共感が持てます。
また、町で行われる悪事をある種滑稽に描く事で、その上で政治を行う大名といった今で言う政治家や官僚が行う悪はもっと遥かに根深くドス黒いとうことを現していたりもします。
考えさせる部分の多い作品です。