短編集、タイトルが示す通りちょっと暗い目の話が多い。
江戸の街を舞台にしたものが多いですが、設定を過去にする事によりより人間の心の『変わらない部分』が浮き彫りにされていると感じる作品が多いです。
*闇の穴
やくざものの元亭主の頼みで、中身を知らされずに『運び屋』をやらさせる元ヨメ。
中身の重要さを知らないため深刻に考えずに頼まれたものを届ける日を1日遅らせてしまうのだがそのため元亭主は・・・
*狂気
道端で母親とはぐれた女の子を助けた大店の亭主、このことが男に久しく忘れていたある感覚を呼び覚ましてしまい・・・。
といった闇の空気が漂う短編が収録、特に幼女誘拐という題材を江戸時代に持ち込んだ『狂気』は衝撃的。
犯罪史等の歴史は”表の歴史”として語られる事がないので、いかにも『昔は人々がおおらかで安全だった』という誤解を招きかねないが、結局人の心や行動なんてものはそう変わりがない、ということをマイナスの視点から描かれたものが多い気がします。